はじめに
取材が終わり、文字起こしも揃った。いよいよ書き始める——
ここで止まる人が多いのが書き出し(リード)です。
インタビュー・取材記事の書き方
では取材記事全体の流れを扱いました。この記事はその中の
「最初の数行をどう書くか」だけを扱います。
書き出しが重要なのは、ここで離脱するかどうかが決まるからです。
どれだけ良い取材をしても、リードが退屈なら本文は読まれません。
やってはいけない書き出し
まず、避けたい型を知っておきます。
① 一般論から始める
❌ 近年、働き方の多様化が進んでいます。
リモートワークの普及により、企業のあり方も変化しています。
読者が何度も読んだ文章です。誰が書いても同じになる書き出しは、
「この記事は読む価値がある」という信号になりません。
② 自己紹介と経緯から始める
❌ 今回は株式会社◯◯の△△様にお話を伺いました。
△△様は2015年に同社に入社し、現在は事業部長を務めています。
これは記事の最後か、本文の中で書く情報です。
読者はまだ、その人に興味を持っていません。
③ 取材できたことを喜ぶ
❌ お忙しい中、貴重なお時間をいただきました。
書き手の感想であり、読者の関心ではありません。
読まれるリードの型
型A: 一番強い発言から始める(最も使いやすい)
取材の中で一番印象的だった一言を冒頭に置きます。
「売上を追うのをやめたら、売上が伸びたんです」
そう話すのは、◯◯を運営する△△さん。
一見矛盾する言葉の背景には、3年かけて組織を作り替えた経験があった。
取材記事の最大の資産は、相手の生の言葉です。
それを冒頭に置くのが、最も確実で、最も取材記事らしい書き出しです。
発言を引用する際は、意味を変えずに短く整えるのは可ですが、
言っていないことを書くのはNGです(詳細は後述)。
型B: 読者の悩みから始める
「取材なんて自分にはできない」
副業でライティングを始めた人の多くが、一度はそう感じます。
読者自身の状況を言い当てて引き込む型です。
読者像が明確な媒体では、これが効きます。
型C: 具体的な場面から始める
午前9時、オフィスに社員は3人しかいなかった。
残りの20人は、全員が自宅やカフェで働いている。
情景描写で引き込む型です。
取材で見たものがある場合に強い書き出しになります(対面取材向き)。
型D: 意外な事実・数字から始める
創業5年で社員数が20倍になった会社が、
いまだに「採用広告を一度も出していない」と言う。
ギャップのある事実を置いて、続きを読ませます。
数字を使う場合は、公開してよい数字かを必ず確認します。
リードに含める要素
型が決まったら、リードの数段落で次を満たします。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| フック | 冒頭1〜2行(上の型A〜D) |
| 誰の話か | 相手の名前・肩書き(簡潔に) |
| 何の話か | この記事で何が分かるか |
| 読む理由 | 読者にとっての意味 |
全体で200〜400字が目安です。
長いリードは、それ自体が離脱の原因になります。
書き出しは最後に書く
実務上のコツとして、リードは本文を書き終えてから書くほうが早く決まります。
理由は単純で、本文を書き終えた時点でしか
「この記事の一番強い部分はどこか」が分からないからです。
手順としてはこうなります。
- 構成を組む(文字起こしから取材記事へ)
- 本文を書く
- 一番強い発言・事実を特定する
- それを使ってリードを書く
先にリードを書こうとして止まるなら、飛ばして本文から書くのが正解です。
発言を引用するときの線引き
リードに発言を置く型Aは強力ですが、扱いに注意が必要です。
やってよいこと
– 「えーと」「あのー」を削る
– 話し言葉を読み言葉に整える(「〜なんですよね」→「〜です」)
– 長い発言から、意味を変えない範囲で一部を抜く
やってはいけないこと
– 言っていないことを書く
– 文脈を切り取って意味を変える(最も危険)
– 複数の発言をつなげて一つの発言に見せる
とくに2つ目は、記事を面白くしようとするときに起きがちです。
インパクトのために意味を変えるのは、発言の改変です。
事実関係の確認手順は
AI記事のファクトチェック手順
も参考になります。取材での発言も、数字や固有名詞は裏取りの対象です。
公開前の確認でリードが変わることもある
取材記事では、公開前に相手に原稿を確認してもらうのが一般的です。
このときリードの発言引用について「この表現は避けたい」と指摘が入ることがあります。
そのときは、代わりに使える発言を2案用意しておくとスムーズです。
一番強い発言がNGになっても、次の候補があれば書き直しが早く済みます。
校了までの流れは
文字起こしから取材記事へ|構成の組み立てと校了まで
で扱います。
まとめ
- 書き出しで離脱するかどうかが決まる。取材が良くてもリードが退屈なら読まれない
- 避ける型:①一般論 ②自己紹介と経緯 ③取材できた感想
- 使える型:A 一番強い発言/B 読者の悩み/C 具体的な場面/D 意外な事実・数字
- 取材記事の最大の資産は相手の生の言葉。型Aが最も確実
- リードに入れる要素:フック・誰の話か・何の話か・読む理由(200〜400字)
- リードは本文を書き終えてから書く。先に書こうとして止まるなら飛ばす
- 引用は整えてよいが、文脈を切り取って意味を変えるのはNG
- 強い発言がNGになる場合に備え、候補を2案用意しておく
リードは、取材で一番心が動いた瞬間を思い出せば書けます。
自分が「これは面白い」と感じた一言が、たいてい読者にも効きます。


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