はじめに
取材記事の質は、取材が始まる前にほぼ決まっています。
その準備の中心にあるのが質問リストです。
インタビュー・取材記事の書き方
では取材記事全体の流れを扱いました。この記事はその中の
「質問をどう用意するか」だけを深掘りします。
最初に結論を書くと、目指すのは台本ではなくリストです。
上から順に読み上げる台本を作ってしまうと、相手の答えから広がる面白い話を
拾えなくなります。かといって無計画で臨むと、聞き漏らします。
この中間を作るのが、質問リストの役割です。
取材は「対面でないと無理」と思われがちですが、メール取材やオンライン取材から
始められます。未経験の方は、まずメール取材で質問を組む練習をするのが安全です。
準備の前にやること:調べ尽くす
質問を作る前に、相手と対象を調べ尽くします。
ここを飛ばすと、調べれば分かることを聞いてしまい、相手の時間を無駄にします。
- 相手の経歴・これまでの発信(SNS・ブログ・過去の取材記事)
- 会社・サービスの概要、最近のニュース
- 同じ相手が過去に受けた取材の内容(同じ質問を避けるため)
「調べても分からなかったこと」だけが質問になる。 これが原則です。
逆に言えば、調べる過程で「ここが分からない」「ここが気になる」と感じた点が、
そのまま質問の種になります。調査と質問作りは地続きの作業です。
質問リストの構造
質問は3層に分けて用意します。
① 核となる質問(3〜5個)
記事のゴールに直結する質問です。
これだけは絶対に聞くというものを、先に決めておきます。
時間が足りなくなっても、ここだけは聞き切る。
逆に言えば、核が5個を超えるなら、記事のテーマが絞れていない可能性があります。
② 深掘り用の質問(各核に2〜3個)
核の質問への答えを、さらに掘るための質問です。
核: なぜ独立されたんですか?
深掘り: 独立を決めた決定的なきっかけは何でしたか/迷いはありましたか/
周囲の反応はどうでしたか
実際の取材では、この深掘りが記事の中身になります。
核の答えだけでは、どこかで読んだような話で終わります。
③ 予備の質問(5個程度)
話が早く終わったとき、沈黙が続いたときの保険です。
使わなければ使わなくていい。「時間が余って困る」を防ぐための備えです。
答えを引き出す質問の作り方
「はい/いいえ」で終わる形にしない
❌ 仕事は順調ですか?
⭕ 始めた頃といちばん変わったのは、どんなところですか?
「どのように」「なぜ」「具体的には」を含めると、相手は具体的に語りやすくなります。
「具体例」を直接頼む
抽象的な答えが返ってきたときのために、具体例を求める質問を用意します。
差し支えなければ、実際にあった例を一つ教えていただけますか。
記事に使える具体的なエピソードは、こうして引き出します。
数字を聞く質問を1つ入れる
「売上が伸びた」より「3年で2倍になった」のほうが、記事の説得力が上がります。
ただし公開可否は必ず確認します(後述)。
時系列で並べる
質問の順番は、答えやすいものからにします。
- 経歴・現在の仕事(事実なので答えやすい)
- きっかけ・転機(ストーリー)
- 苦労・失敗(やや踏み込む)
- これから・読者へのメッセージ(締め)
いきなり核心に入ると、相手が構えてしまいます。
前半で話しやすい空気を作り、後半で踏み込むのが基本の流れです。
台本にしないための工夫
ここが、この記事でいちばん伝えたい部分です。
リストは「地図」として持つ
質問リストは、上から順に消化するチェックリストではありません。
話がどこへ進んでも、全体像のどこにいるか分かるための地図として使います。
実際の取材では、質問3の答えの中に質問5の内容が出てくることがよくあります。
そのときは順番を無視して、流れに乗って深掘りする。
リストは「聞き漏らしを防ぐ最後の確認用」と考えると、ちょうどいい距離感になります。
手元の紙は1枚にする
質問が何ページにもなると、紙をめくる動作で会話が止まります。
核の質問だけを1枚に大きく書いておくと、視線を落とす時間が減り、
相手の話に集中できます。
「今日はこの3点を伺います」と最初に伝える
取材の冒頭で、聞きたいことの柱を共有します。
相手も話の方向を掴めるので、答えが的を射たものになります。
事前に確認しておくこと
質問リストと一緒に、取材の条件も確認しておきます。
- 所要時間(何分いただけるか)
- 録音の可否
- 写真撮影の可否
- 公開してよい範囲(数字・社名・個人名)
とくに最後が重要です。
「売上」「従業員数」「取引先名」は、公開NGのこともあります。
聞いたうえで「これは記事に書いてよいか」を確認するのが安全です。
引用の扱いや守秘義務については
著作権譲渡・秘密保持契約(NDA)の基本
も確認しておくと、判断に迷いません。
質問リストはテンプレート化できる
一度作れば、骨格は次の取材でも使えます。
【事前調査メモ】相手の経歴・直近の発信・過去の取材
【記事のゴール】この記事で読者に何を伝えるか(1文)
■ 核の質問(3〜5)
1.
└ 深掘り:
2.
└ 深掘り:
■ 予備の質問(5)
■ 確認事項:所要時間/録音可否/撮影可否/公開NG範囲
このテンプレを使い回せば、準備時間は案件ごとに短くなっていきます。
取材スキルを体系的に身につけたい場合は、
未経験から3ヶ月でプロライターの思考力を習得
のような講座で、質問設計を含めた基礎を固める方法もあります。
案件をこなしながら磨く進め方でも身につきますが、時間はかかります。
まとめ
- 取材記事の質は取材前の準備でほぼ決まる
- 質問を作る前に調べ尽くす。「調べても分からなかったこと」だけが質問になる
- 構造は3層:①核(3〜5個)②各核の深掘り(2〜3個)③予備(5個)
- 引き出す質問は「はい/いいえ」で終わらせない。「どのように」「なぜ」「具体的には」
- 順番は答えやすいものから。前半で話しやすい空気を作り、後半で踏み込む
- 台本にしない。 リストは「地図」であり「聞き漏らしの最終確認用」
- 所要時間・録音可否・公開NG範囲を事前に確認しておく
準備したリストの半分も使わずに終わる取材が、実はいい取材です。
話が広がった結果なので、リストが余ることを恐れないでください。


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